油絵科夏期講習会 合格者の歩み

怖がらずにおもいっきり自分を表現しよう!! 一人一人の絵と思いに目線を合わせて芸大・美大合格を目指します
「失敗から多くを学ぶ」真島君、芸大現役合格への第一歩である夏を切り取ります

真島 柊 東京芸術大学絵画科油画専攻現役合格
(都立片倉高校造形美術コース)

真島君の制作姿勢・作品を見て

彼は決して器用ではなかったように思います。どちらかと言えば不器用で、要領も良い方ではなかった印象があります。愚直に時間をかけて出てくる絵具の綺麗さや、ハーフトーンの魅力を持っていましたが、まだ画面で上手く活かすことが出来ませんでした。受験生の夏の過ごし方は人それぞれです。夏休み中、時間を見つけては展覧会に足を運び勉強熱心であった彼の表現したい世界が、画面とうまく噛み合い始めるのは夏よりもっと先の事となります。そういう意味で真島君にとっての夏期講習は試験当日のジャンプへと繋がる助走の期間であったと言えるでしょう。そんな彼がどのように夏を過ごしたかを、指導内容と作品で少し紹介します。

夏期講習を振り返って

Q 1 . 夏期講習はどんな気持ちで挑みましたか?

僕は6月からタチビの夜間部に入った新参者だったのでタチビの場にもまだ馴染めず夜間部の皆よりもデッサンも油彩も下手な自分がさらに浪人生と一緒にやっていけるのか?という思いが強く、不安な気持ちで自分に全く余裕が無く、せめて一枚一枚丁寧に大切に描こうと思いで夏期講習を受けました。

Q 2 . 授業や講評で学んだ事は?

課題に対して自分の作品が応えられているのかを客観的に判断することが大切だと学びました。講評では他の人の良いところ、自分に足りないものが大人数の作品が一斉に並ぶことでよくわかりました。

Q 3 . 講習会、学校も休みの日は何してましたか?

学校が夏休みで予備校も休みの時は、高校の卒業制作のためにデッサンや油彩でエスキースしたり、武蔵美で片倉高校と総合芸術高校が合同でリトグラフの体験講習を受けたりと絵の製作か学科の勉強をしてました。

Q 4 . 夏の過ごし方で大事だと思ったことは?

人は成功した時よりも失敗した時の方がはるかに多くのことを学ぶことがわかりました。なので、もし上手くいかなかった時はなぜダメだったのかを考えること、それを文字として具体的な形に起こし整理すること、そしてビビらずに挑戦することが夏期講習では大事だと思いました。それから、タチビの人と会話することが大切だと思いました。

夏期と冬期・直前講習の絵を比較

「ポーズするモデルを描きなさい」夏期講習の人物油彩です。この時期はまだ絵の狙いが定まっていません。モデルはコスチュームの柄も含めて特徴を良く捉えていますが、背景との関わりが弱く、人物の配置もやや左寄りになっていて、中途半端な構図です。人物に留意するあまり、壁と人物の距離感が曖昧な状態です。この場合、背景にも具体的な形を配置しないと左の壁が余って見えてしまいます。力の入れ具合から見て、人物に興味がある事が伺えるので、人物を中心に据えた構図を取って進めるのも1つの手です。

「ポーズする人物を描きなさい」同じく人物油彩ですが、こちらは冬期講習の作品です。左の油彩と比べると、安定感があります。人物を見せる事を中心に、背景との距離感や調和もとれています。実際のモデルがいる空間の広さも感じますし、なにより真島君の持ち味である、描いて出てくるグレートーンの魅力が発揮されています。構図が良く見えるのは、絵の狙いをしっかり持って進めているということです。過去の失敗が活かされていますね。

デッサン・木炭紙『「夏」というテーマで渡されたモチーフ(スイカ)を描きなさい』という夏期講習の課題です。室内風景はお盆の雰囲気が伝わり、光の捉え方もムードがあります。ですが、縁側から先の空間が非常に見づらいです。描き味に強弱がなく、同じようなグレーで描かれていて縁側から奥に広かる風景にまったく距離感を感じません。室内風景には興味があったけど、外の風景には思い入れは無さそうです。この作品も絵の狙いと、それに対する構図の取り方が噛み合っていません。この絵からはエスキースでの考察の足りなさも伺えます。

デッサン・木炭紙「モチーフと風景」という直前講習の課題です。配置されたブロックから連想してアスファルトの道路が遠くまで続いていく広い空間が気持ちよい印象を与えてくれます。左のデッサンも手前から奥に広がる空間を扱っていますが、こちらは空間設定と狙いである道路の形が上手く噛み合っていて、絵で見せたい事が伝わりやすい構図となっています。道路周辺の看板や、草?にもっと調子の変化が欲しい所ですが、この時期から、狙いが散漫にならず、構図が絞られてきています。

夏期講習油彩「モチーフを描きなさい」という課題です。丸められたミラーフィルムに歪んで映るモチーフを見せたかった、あるいは興味を持った。と優しく見れば読み取れますが、背景の寂しさや全体の平板な印象から本人の迷いの方が強く伝わってきます。モチーフの特徴である映る形、質感や大きさなどを素直な目で捉えれば、この構図にはならなかったでしょう。どうして良いか解らないモチーフは多々出題されますが、出題者側の意図を汲み取ったり、モチーフの特徴を素直に表現する事も大事です。

直前講習の作品です。左の油彩と同様に「モチーフを描きなさい」という課題です。様々な質感・形状・現象を持ったモチーフをじっくり誠実に捉え追いかけています。完成度もありなかなか好印象です。この頃からエスキースをしっかり取るようになりました。見せたい物、描きたい事だけに捕われず、1つの画面に対する配慮が見て取れます。出題文と組まれたモチーフを冷静に解釈することで、素朴な画面ですが、描き手の持ち味と魅力を感じる秀作となりました。欲を言うと左側の透けたビニールに少し柔らかさがあると良いです。

夏期講習油彩「好きな道」という課題です。ほのぼのとした情景で1つの画面としては見やすいですが、課題である「道」この絵では田んぼのあぜ道の見え方が狙いとしてもっと強調されて良いでしょう。状況説明の為に配置されたかかしや民家は悪くはないですが、大きさの単位が似てしまい、距離感が掴みづらい空間になっています。また、真島君は広い空間を扱った時に説明的な要素が増えて、狙いが散漫になる傾向も見えてきました。本当に見せたい物を見せるときは要素の引き算も重要なポイントとなります。

直前講習「モチーフと身体」という課題です。この作品は真島君の成長が強く感じられるものとなりました。左の油彩で言った要素の引き算が上手く出来ている作品です。モチーフに寄りかかる人物が遠くのモチーフを見つめる。ただそれだけの絵ですが、人物の目線と絞られた要素がストレートに描き手の世界を伝えています。要素が絞られることによって描写に掛けられる時間も増え、絵のクオリティも感じられ、狙いを伝えるために、絵で勝負をする度胸が身に付いています。そしてこの数日後、芸大で更なる勝負を仕掛けるのです。