特集 立美ってどんなところ?~高校三年生と講師による座談会~

座談会メンバー 左から、飯島さん(I)、加藤くん(K)、鈴木さん(S)
聞き手 基礎科・彫刻科講師 吉原(Y)、中畑(N)

初めてのデッサン

Y 今日は基礎科から彫刻科へ進んだ高校三年生3人に集まってもらいました。デッサンの事や基礎科や受験科の事など、色々聞いていきたいと思うのでよろしくお願いします。
全 よろしくおねがいします。

Y 久々に昔のデッサンを見てみてどう?
K めっちゃ白いですね。
Y 石膏デッサンが?
K 全体的に。
Y あらためて並べて見てみると白かったデッサンから調子の幅を拾えるようになったのがわかるね。。
K そうですね。
N 基礎科のときの方が素直に描いてますよね。
Y 基礎科の頃って技術がない分よく見てたりするからね。初めてのデッサンで白い紙に白いモチーフを、黒い鉛筆とか木炭で描くって意味がわからなくなかった?

S わからなかったです全然。私パースって存在すら知らなくて、パースが狂ってるって言われても何言ってるのか全然わかりませんでした。
Y そうだよね。もちろんパースの説明をするんだけど、言われても中々出来ないしね。修行だよ。今回加藤君が基礎科に来て最初のデッサンを持って来てもらったんだけど、普通によく描けてるよね。

I 上手ぁ。
K (自分の作品を見て)良く描いてるなぁ。形とか比率とか合わなかったですけど良く見て描いてるなと思います。何でもかんでも拾ってやろうっていうのが見て取れますね。
全員 笑。
Y 講師みたいなコメントだね(笑)。受験科行くと技術力は上がるけど、描き方みたいなのが先攻してこのデッサンみたいに拾えなかったりするもんね。  基礎科では最初に描く石膏像として、ラボルトを描かせる事が多いんだけど、これは飯島さんと鈴木さんが基礎科生の時に描いたラボルトのデッサンだね。

I もう本当やだ(笑)!
Y 一生懸命描いてるじゃん。
I でも頭とか今と一緒のことしてるなって思います。ぼやかして誤摩化してるなって。やめます!
N 顔がいい。全体を繋げて見る意識が弱いとか、構造の話をしていくと弱い所はあるけど。ラボルトの意味不明な表情というか、存在感を素直に感じて表そうとしてる良さがあるよ。本当はそういう事の方がだいじなんだよなぁ。

S 木炭をそれまで使った事がなくて、どの先生に言われたか忘れましたけど、そこに物が存在してるように描くって言われたのを覚えてて、描いたら真っ黒になりました。笑。
Y 横位置だから形が取りやすかったのもあると思うんだけど、似てるし、髪の毛とか今より頑張って描いてるくらい(笑)。面の変り目が見つけられないから、おでこ周りが白く抜けすぎてたり、形体感が弱かったりするけど、よく観察したのがわかるよ。

コンクール

Y モリエールはいつ描いたやつ?

K 基礎科のコンクールです。紙の裏と表を間違えてタイムロスをしたうえに、構図をまちがえたっていう…。 コンクールって先生達は指導出来ないじゃないですか?でもこれは見かねた中畑先生が構図か変えたらっていわれたのを、押し切った結果こういう風になりました。
N やりきろうとしてるのは良いけどね。
Y 基礎科では受験科の高校三年生と合同コンクールをやってるんだけど、飯島さんの自画像は今年の合同コンクールのものだよね。基礎科の時に描いた自画像もあるので並べてみてみようか。

I 恥ずかしい…(笑)。
Y 昔からいい表情の自画像を描くよね。自画像って表面の凹凸を描くってだけじゃなくて、その人の内面を写し出せるものだから、飯島さんらしさがでてるのはとても大事。骨格的な正しさももちろん必要なのでそこは押さえてほしいけど。こっちは(大きく口を開けてる自画像。)今年の合同コンクールで5位だった自画像だね。インパクトがあって面白いし、なにより飯島さんのキャラがよく出てる。
N 加藤君は今年の合同コンクールでは4位で基礎科のコンクールでも結構評価よかったよね。7位だっけ?
K 5位です!下げないでください(笑)!

N (顔だけの)モリエールの時を思い出してみても、顔に目がいくとか、モチーフの感情とか表情の繊細さを大事にしたいってのがこだわりかもね。デッサンってどうしてもそのまま描くというか、写実の基礎を鍛える意味合いが強いように思うけど、長い目で見た時、後々作品に出ている空気感みたいなのが感じられる時もあって、そういうのも面白い。

基礎科と受験科

Y 飯島さんは基礎科に通いだした頃って部活やってたんだよね。
I そうです。バスケ部でした。
Y 忙しかった?
N そんな事ないです。
I ええー!?
Y なんで中畑先生が答えんの?(笑)
I ちゃんとやってましたよ部活!!(笑)
N ライブいったりしてたじゃん。
I そんなことないですよ!走ってましたよちゃんと!(笑)

Y 両立ってどうやってたの?
I 高校二年生の夏期講習に初めて来て、学校がある時は部活が忙しかったので、講習会だけ来るようにしてました。冬期講習からまた来たんですけど、大会中やその直前は予備校を休んで部活に集中して、大会が終わってからまた来ました。
Y 加藤君は高一の冬から来てたよね。結構始めるの早い方だと思うんだけど、きっかけはあったの?
K 美術部の3年生の先輩が美術室でムサビの試験対策をしているのを見ていたのと、その頃サラリーマンになる事への漠然とした不安があって、絵を描く事が好きだし美術系に進もうかと思って予備校へ通う事にしました。

Y 飯島さんは最初っから彫刻科行きたいっていってたよね?何で?
I ええっと…。なんでだろ?粘土が楽しかったから。
Y 基礎科の彫刻体験でやったやつ?
I いえ、中一くらいのときに学校で好きな食べ物を作る授業があって、グレープフルーツを作ったんですよ。紙粘土で作って、着彩もして、それがすごく楽しかったので彫刻科にしようと思いました。
Y 美大はもともと行こうと思ってたの?
I いやぜんぜん。高一の冬に進路を選択しなくちゃ行けなくて、そこで初めて考えました。
Y 立美に来てみてどうだった?
I みんなすごく上手くて焦りました。あと最初吉原先生と中畑先生が同一人物だと思ってて、ある日二人が同時に講評に来た事があって、偽物だ!ってなりました(笑)
全員 笑。
Y どっちが偽物なんだろう(笑)。鈴木さんはどうして彫刻科にしようと思ったの?
S 模刻がやりたかったからです。
Y すごく迷ってたよね、基礎科から何科に進むかで。映画関係、ジュエリー、パターンナー、パティシエとか。最早美術系ですらないっていう。
S ずっと彫刻科志望だったのに、受験科体験をしたらどれも面白くて迷っちゃって…。結局は一周回って彫刻科志望に戻りました。

Y 芸大美大って作家になる人ばかりが行くようなイメージがあるけど、もちろんそれだけじゃなくて、大学で専門的に学んだ技術や発想を活かして、就職する人の方がむしろ多いんだよね。そういった人材を求めて企業からの募集も来るし。それは他の大学では学べない事だし、みんなが将来どういう道に進むのかわからないけど、大きな武器になる思うよ。じゃあ受験科に移ってからのデッサンをみてみようか。

Y これは加藤君の人物デッサンだね。思い入れがあるの?
K 夏期講習会で人物デッサンの枚数を重ねてきて、これが最後の人物デッサンで、一番まとまってるし、見え方が綺麗かなって。毎回顔ばっかりに集中して、中畑先生に顔似てるでしょ?っていうと全然似てねえって言われるまでが一連の流れでした(笑)。
Y 単純に炭が綺麗だよね。ズボンが破れてたり、木枠に足を通してたり,描く要素が多いんだけど、丁寧に描いててみやすい。プロポーションも割と自然だし。人物デッサンを描く時は関節の位置を正確に取る事、重心が何処にあるか、末端を描く事がとても大事。離れて見て自分の描いてる人が自然に見えるか確認してほしい。あとモデルをしてくれた人を知ってるから言うけど顔は似てない(笑)。

N 飯島さんのラオコーンだけど、ラオコーンってヒゲ、髪、筋肉の作り込みが複雑で動きも激しいモチーフだけどなんとか形にしようと頑張ってる。やっぱり頭部のごちゃごちゃした所はまだどう形にして良いかわからない感じだけど。石膏像でどう描いたらいいかわからない時は近くに寄ってみたり、ハーフトーンで描けるところを整理してみたり。忍耐強さが一番大事かな。

N 鈴木さんのアリアスとビンの組石膏は彫刻科のコンクールのだよね。
S 講評では割とほめられたのに、誰も1位を入れてくれなくて、2番目にした人が多くて順位は低かったです。
N ビンがぷるぷるしてる(笑)。複数のモチーフを一つの画面に納める時ってどんな構図にするか迷う事が多いし、描写の時間配分や描き込みのバランスを調整するのも難しいけど、全体を一つにまとめる力はあるよ。ただ、一つにまとめた上で自分のこだわりや、リアリティをどこまで追求出来るかが大事なんだけどまだそこが甘いね。まぁ、コンクールの順位が低かったのは単純に頭をもと描いてほしかったってことなんだけど。

課外授業

Y 立美の課外授業で美術館やギャラリーの展示をみにいってみて、それまで皆が彫刻って聞いて思い浮かぶイメージがあったと思うんだけど、何か変化はあった?特に今年は先生達の展示も多かったし。(10月にアニッシュ・カプーア、国立西洋美術館、藝大陳列館、国立科学博物館、東京国立博物館、中畑講師個展、11月にSpiral、江頭講師個展を鑑賞。)

S 中畑先生の展示はかわいい作品がいっぱいで、中畑良孝感が出てて良かったです。熱いハートを持ってるなって。
I めっちゃかっこ良かったです!!いつもみんなとデッサンや塑造をしてるときにはどんな事を考えてるのかわからなかったけど、話をきいて、かわいい作品にも重い設定があったりして作品に自分が出るってすごいなと思いました。それまで木彫って色とかあんまりのせたらいけないのかと思ってました。あと「俺が作れば俺になる。」って先生が言ってたのが心に残ってます。 カプーアの展示は情報量が一杯で考えるのが追いつかなかったです。不思議な気分になりました。
N ありがとうございます(照)。
Y 中畑先生の作品は木彫でまさに彫刻って感じだけど、江頭先生の作品は毛布に包まれた部屋と物のインンスタレーションだったよね。

S 江頭先生の展示はDMをもらったときから楽しみにしていて、作品の見た目は可愛いんだけど、この作品に行き着いた経緯とかアイデアとかが面白くて、彫刻でこんな表現をしていいんだって思いました。展示してある物が、みかんとか、どれも徹底して毛布に包まれていて、すごかったです。
K 僕は展示ってルネッサンスやバロックの油絵ばかり見てたので、(個展形式の)彫刻の展示をみたのは今回が初めてだったので、1人の人が作った作品の世界観を楽しむ事が出来て、見方が一つ増えました。
Y インスタレーションって鑑賞するってだけじゃなくて、今回の江頭先生の作品みたいに、見に来た人が体験出来る所が特徴だよね。別に彫刻をやってる人の専売特許ではないし、発生は諸説あるんだけど、彫刻って空間に作品を設置して成り立つものだから、インスタレーションの要素が元々含まれていて、だから作った物がどう空間に影響するのかって所から、どういう空間を作るかに展開していって、その辺りがインスタレーションの流れの一つになったんじゃないかな。みんなも作品を作るだけじゃなくて、どう見せるかも考えてみてね。

Y 今日はどうもありがとう。もうすぐ試験だし、頑張っていきましょう!
K うすっ!
I 楽しかったです!がんばります!
S いえいえ、おつかれさまでしたー!