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AU 表紙の作品について

デザイン・工芸科 美術系受験 一年間の歩み

AU表紙作品について、こちらの作品を書いた方からコメントが届きました!

この作品が生まれるまで

私が美大を志したのは遅く高校3年生の5月で、1年間の浪人を経て多摩美術大学グラフィックデザイン学科に入学することができました。両親には本当に感謝しています。私は熱しやすく冷めやすい性格なので、やる気に波があり、ずっと頑張ることは苦手でしたが、周りと違うことをしたいという気持ちは高かったので、とにかく彩度を高く鮮やかな作品を描くことを意識していました。そんなことを続けるうちにそれが私のスタイルになっていって、受験以外の絵や服装もいつの間にか鮮やかになっていました。理由を考えてもやはり、自分が鮮やかなことが最高だと思っていて、鮮やかなものがとても好きだったので、だからこそこだわって続けられたのだと思います。しかしその周りと「違うこと」というものばかりを意識していた結果、それが空回りしてしまい散漫な作品ばかりが生まれてしまいました。ある程度自分のスタイルが確立してからも、画面をいかに散漫に見せないかという戦いでした。そんな中で先生方がどの作品についてもまず最初に、良いね!と言ってくださったからこそ、画面をまとめることと引き換えに自信をなくすることもなく、自分のスタイルを忘れなかったのだと思います。

そして試験日が近づくにつれて、なぜ散漫になってしまうのかという理由が見えてきたので、段々まとまりがあって見やすい平面構成が描けるようになっていきました。ところがそんな時こと油断は禁物で、入試1ヶ月前くらいに5課題連続で失敗してしまいすごく落ち込んでしまいましたが、今考えるとその失敗がなければ明確なコツも掴めなかったし、試験で満点は取れなかったと思います。
今年の多摩グラの平面構成は「本をモチーフにStoryの文字を用いてあなたの物語を平面構成しなさい」という前代未聞の形式でしたが、常に周りと違うことを意識していたことと、これだけできれば絶対に受かる!という自信があったお陰で、怯むことなく逆に気合いが入って立美でやったどの作品よりもよいと言えるほどの作品が描けました。

現役時代と浪人時代の2年の大半をすごした立美は、近すぎず遠すぎない微妙な距離を保った場所です。他の予備校とは違って、一人ひとりと向き合って良いところを伸ばし、個性を引き出してくれるところが一番の魅力だと感じています。遅刻して怒られたり、いろいろありましたが2年間たいへんお世話になりました。
 
多摩美術大学グラフィックデザイン学科1年 小林勇斗